診療支援
治療

成長ホルモン(GH)分泌不全症
growth hormone deficiency
福田いずみ
(日本医科大学大学院 教授・内分泌代謝・腎臓内科学)

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ニュートピックス

・糖尿病は現在,GH治療の禁忌ではなく慎重投与とされている.

治療のポイント

・成人GH分泌不全症では,GH以外に複数系統の下垂体ホルモン欠乏を伴っている場合がある.まず副腎皮質ホルモン,甲状腺ホルモンなどほかの欠乏ホルモンの補充を適切に行ったうえでGHの補充を行う.

・GHに対する反応性は個人差が大きいので補充量はkg体重あたり一律とするのではなく,個別に設定したほうがよいと考えられている.

・GH治療開始後は,血中IGF-I値が基準値内に保たれるようにゆっくり調整する.

◆病態と診断

A病態

・本症は種々の間脳下垂体領域の疾患が原因となり成人期のGH欠乏によって引き起こされる.

・本項では成人GH分泌不全症(adult growth hormone deficiency)について解説する.

・易疲労感,QOLの低下,内臓脂肪増加を主体とした体組成の変化,脂質異常症,非アルコール性脂肪性肝疾患などをきたす.

・心血管系合併症による死亡率が高いと考えられている.

B診断

・間脳下垂体疾患を考慮すべき病歴・臨床症状を呈する場合は下垂体ホルモンと標的器官のホルモン基礎値をスクリーニングする.

・次の段階でGH分泌刺激試験を施行し得られたGH頂値をもとに診断する.

血中IGF-I値も参考所見として有用である.

◆治療方針

 重症型GH分泌不全症が補充療法の対象となる.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

‍ (daily製剤)

1)ソマトロピン(ジェノトロピン,ノルディトロピン,ヒューマトロープ,グロウジェクト,ソマトロピンBSのいずれか)注 開始用量の目安は1日3μg/kg.毎日就寝前に自己皮下注射する

‍ (weekly製剤)

2)ソマプシタン(ソグルーヤ)注 1回1.5mgを開始用量とし,週1回 皮下注.60歳以上では1.0mg,経口エストロゲン服用中の女性では2.

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