診療支援
治療

単純ヘルペス脳炎
herpes simplex encephalitis(HSE)
原  誠
(日本大学准教授・神経内科学)

頻度 あまりみない

GL単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017

治療のポイント

・本症は治療開始の遅れが転帰不良につながる神経救急(neurological emergency)疾患であり,疑われるすべての患者に対し,確定診断を待たずすみやかにアシクロビルを開始する.

・診断が確定された患者に対してはアシクロビルを最低14~21日間投与し,脳脊髄液HSV DNA陰性を2回連続して確認した時点で終了する.

・副腎皮質ステロイドの併用は確立されていないが,一定の科学的根拠もあり勧められる.

・抗ウイルス療法のほか,けいれんに対する抗発作薬の投与が必要になることがある.

◆病態と診断

A病態

・成人や一部の小児例では単純ヘルペスウイルス(HSV)の再活性化によりウイルスが神経向性に中枢神経内に侵入し,典型例では片側優位の側頭葉内側を含む大脳辺縁系に壊死病巣(時に出血変化を伴う)を形成する.

・多くは発熱や頭痛の数日後に覚醒度低下や意識変容のような意識障害,異常言動を含む精神症状で発症することが多い.

・病変の主座(局在)を反映して記憶障害を中心とした多彩な高次脳機能障害を認めるほか,けいれんを4~7割に認める.

B診断

・HSV-DNA高感度PCR(real-timeまたはnested PCR)法による脳脊髄液中HSV-DNAの検出が精度の高い(感度95%,特異度99%)確定診断法である.

・脳脊髄液一般検査では,多くが単核球優位の細胞増多と総蛋白上昇を認める.髄液糖は正常範囲のことが多いが,1/4の患者では低下がみられる.

・神経巣症状を認める,または脳ヘルニアが示唆される場合には脳脊髄液検査前に頭部CT/MRIの施行が推奨される.早期病変の検出にはCTよりMRI(特に拡散強調画像)が優れ,すみやかに検査可能な場合にはMRIが優先される.

・早期より脳波異常を8割以上の患者に認め,特徴的な周期性一側てんかん

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