診療支援
治療

複視
diplopia,double vision
森本 壮
(大阪大学准教授・視覚機能形成学)

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治療のポイント

・複視には単眼複視と両眼複視があり,片眼遮閉によってまずは両者を鑑別する.

・急性発症の両眼複視には,脳出血や脳梗塞,脳動脈瘤の破裂など命に危険が及ぶ場合があるため注意を要する.

・両眼複視の原因はさまざまであり,発症時の状況や自覚症状など十分な問診と眼位,眼球運動検査などの眼科検査,疾患の鑑別に必要な検査やMRIなどの画像検査を行い,慎重に鑑別診断を行うことが重要である.

◆病態と診断

A病態

・複視とは1つの物が二重に見える状態である.

・複視には単眼複視と両眼複視があり,片眼遮閉で消失する場合が両眼複視であり,両者を見分けることは容易である.

・単眼複視は,眼の光学系の異常によって生じ,水晶体の異常に起因する白内障,円錐角膜などの角膜形状の異常,未矯正の屈折異常・強度近視・乱視,ドライアイなどがある〔,「白内障」,,「近視」,,「ドライアイ」,,「屈折異常(眼鏡,コンタクトレンズ)」の項参照〕.

・両眼複視は,左右眼の視線ズレ(斜視)によって,物体を単一に見ることができなくなり2つの像が見える状態であり,その原因はさまざまである.

・両眼複視には,斜視,動眼神経・滑車神経・外転神経の麻痺,核間麻痺による水平注視麻痺,核上性の垂直注視麻痺などの神経原性のものと,甲状腺眼症,特発性眼窩炎症,重症筋無力症などの筋原性のものがある.

B診断

・まずは複視が単眼性か両眼性かを,片眼を遮閉することによって確認する.

1.単眼複視

・単眼複視は眼の光学系の異常によって生じるため,眼科検査により白内障,円錐角膜,屈折異常,ドライアイなどの疾患の鑑別を進める.

2.両眼複視

・両眼複視の場合は,眼位および眼球運動検査で共同性か非共同性斜視に分ける.

・共同性斜視は通常の斜視であり,それ以外の非共同性斜視は緊急性がないか注意しながら,神経原性か筋原性かの鑑別診断を行う.まずは問診を行

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