診療支援
治療

動物からうつる皮膚疾患
Infectious skin diseases from animals
夏秋 優
(兵庫医科大学教授)

【動物からうつる皮膚疾患とは】動物から感染する疾患(動物由来感染症)は,人獣共通感染症ともよばれ,「本来ヒトとヒト以外の脊椎動物の両者の間を伝播する性質を有する微生物による感染と疾病」あるいは「人と人以外の脊椎動物の間で自然に移行する病気又は感染」と定義されている.その病原体としてはウイルス,リケッチア,細菌,真菌,原虫,蠕虫,節足動物など200以上が挙げられる.近年では海外との交流が盛んになっており,国内ではみられないが海外で感染して国内に持ち込まれる疾患や,ペットブームを反映して愛玩動物から感染する疾患も増加している.そのなかで皮膚疾患,あるいは皮膚病変をきたす疾患に限定すると,ウイルス感染症ではデング熱やジカウイルス感染症,リケッチア感染症では日本紅斑熱やつつが虫病,細菌感染症ではパスツレラ感染症,ライム病,ネコひっかき病,野兎病,非結核性抗酸菌症,真菌感染症では白癬,原虫感染症ではChagas病,リーシュマニア症,蠕虫感染症では顎口虫症,Manson孤虫症,節足動物感染症では疥癬など,きわめて多くの疾患を挙げることができる.

【動物からうつる皮膚疾患をみたら】動物由来感染症を診断する際に重要なことは,まず臨床的にその疾患を疑うこと,そして,詳細に病歴を聴取して患者の行動歴(特に野外活動や海外渡航)や動物との接点(ペット飼育歴,狩猟歴,生ものの生食歴)などを確認することである.地域性の明確な疾患もあるので,患者の居住地や滞在地に関する情報は重要である.これらの感染症のなかにはヒト-ヒト感染をしない疾患が多いが,感染症法で指定されている疾患の場合は地域の保健所との連携,報告が必要になることに留意する.

□鑑別のポイント‍ 表1-18に主な動物由来感染症の原因と由来(媒介)動物,およびその皮膚病変などをまとめた.主なポイントは以下の通りである.デング熱,ジカウイルス感染症

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