診療支援
治療

抗菌薬
Systemic antimicrobial agents
盛山 吉弘
(土浦協同病院部長)

【概説】皮膚軟部組織感染症(SSTI:skin and soft tissue infection)の多くは,β溶血性レンサ球菌(溶連菌)あるいは黄色ブドウ球菌が関与する.溶連菌はペニシリン系薬が著効する.一方,黄色ブドウ球菌については,2000年以降市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA:community-associated methicillin-resistant Staphylococcus aureus)が高率にみられるようになってきており,抗菌薬の選択には注意が必要となる.起炎菌が判明する前の初期治療をempiric therapy,起炎菌判明後の治療をdefinitive therapyとよぶが,empiric therapyでの抗菌薬の選択には,患者要因や重症度も考慮する必要がある.軽症例では耐性菌を作らないという観点から過剰治療にならないように,逆に免疫不全患者・重症例では,想定される起炎菌すべてを覆う広域抗菌薬の使用を検討する.起炎菌が判明したらdefinitive therapyとして,なるべく効きがよく,狭いスペクトラムの抗菌薬を,必要な期間に限定して,十分な量を用いることが肝要である.抗菌薬の投与量は薬剤にもよるが,患者の腎機能によって調整が必要となることが多い.本項では標準投与量を記載しているが,実際に使用する際には添付文書などを確認されたい.


Ⅰ 伝染性膿痂疹

【概説】主に小児が罹患する皮膚の表在性感染症である.臨床的には水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹に分類されるが,本項では水疱性膿痂疹について述べる.水疱性膿痂疹は,黄色ブドウ球菌の産生する表皮剝離毒素により発症する疾患である.

【適応】狭い範囲に限局している場合には,必ずしも抗菌薬の全身投与を必要としない.広範囲に広がる場合や顔面を主体とする場合には,抗菌薬の全身投与が必要と

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