診療支援
治療

Vibrio vulnificus感染症
Vibrio vulnificus infection
井上 卓也
(佐賀大学准教授)

病態

‍ Vibrio vulnificusは,温暖な海水や汽水の魚介類から高頻度に検出されるVibrio属の低度好塩性グラム陰性桿菌である.至適NaCl濃度は2.0~3.0%であり,8%では発育が阻止される.そのため,河口や湾岸の汽水域を好み,海水温が20℃を超えると著明に増加する.Vibrio vulnificusは,健常者においてはほとんど害がないため特別な注意は必要ないが,肝硬変などの肝障害を有する患者や糖尿病患者,ヘモクロマトーシス患者に,創傷感染や経口感染を起こし,壊死性筋膜炎を発症する.肝障害患者では,Kupffer細胞の細菌貪食能の低下や,動静脈シャントの形成による菌の体循環への侵入,血清鉄濃度の上昇による細菌増殖などにより発症しやすくなると考えられている.好発年齢は50~60歳で,男女比は8:1と男性に多い.発生時期は7~9月に集中しているが,5月や1月の発生報告もある.臨床病型は,外傷による創傷感染型,経口感染による胃腸型,原発性敗血症型の3型に分けられる.創傷感染型は,創傷がある状態で海に入ったり海中で受傷したりすることによって,創傷から菌が侵入し感染する.胃腸型は,生の魚介類を摂取後,腹痛下痢など消化器症状のみを呈する.原発性敗血症型は,基礎疾患に慢性肝機能障害を認め,生の魚介類を摂取後,壊死性軟部組織感染症を発症し,短時間で敗血症となり死亡する.


診断

 原発性敗血症型は,肝硬変などの肝障害を有し,典型的な臨床経過では,生の魚介類を摂取後7時間ほどして倦怠感がみられ始め,24時間以内に発熱,消化器症状,下肢の激痛が出現し,36時間以内に紫斑や血疱を形成する(図27-13).病変は下肢に多く,両下肢などに病変が多発しやすい.Vibrio vulnificus感染による壊死性筋膜炎は,皮下組織のガス貯留や滲出液の悪臭はなく,同じく水環境から検出されるAer

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