病態
梅毒は皮膚・粘膜をはじめ広範な臓器に感染し炎症を起こす慢性感染症である.その病原体のTreponema pallidum(TP)(図29-1)図はスピロヘータ目トレポネーマ属の細菌であり,らせん形の菌体を回転させて運動する.TP感染侵入部位の皮膚・粘膜に,梅毒Ⅰ期疹として初期硬結,硬性下疳(図29-2)図が出現するが,TPは所属リンパ節で増殖するためリンパ節は無痛性に腫脹する(無痛性横痃).これは硬性下疳とともに感染5~6週後に消失するが,増殖したTPは血行性に全身に散布され,感染後12週前後で,梅毒Ⅱ期疹を発現する.Ⅱ期疹はバラ疹(図29-3)図以外にも,粘膜疹(梅毒アンギーナ)(図29-4)図,扁平コンジローマ,膿疱性梅毒,梅毒性脱毛,梅毒性白斑など多様な皮膚症状を示す.Ⅰ期,Ⅱ期を通じて下疳(粘膜の潰瘍)や横痃(リンパ節腫脹)は無痛性であることが特徴である.Ⅲ期は年余を経て心血
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