病態
顎口虫の成虫はイヌ,ネコ,ブタなどの動物を終宿主とするが,幼虫の中間宿主である魚類やヘビ,カエルなどをヒトが摂取することで感染し,その体内移動によって皮膚症状を生じる.有棘顎口虫,剛棘顎口虫,日本顎口虫,ドロレス顎口虫,二核顎口虫の5種類がヒトに寄生する顎口虫として知られるが,国内には剛棘顎口虫と二核顎口虫は生息しない.
【頻度】日本を含む東南アジアが主要な流行地で,アフリカや中南米での発生もある.魚類や両生類,爬虫類の生食で感染する.国内では中高年男性が多い.地域によっては年間数例程度がみられることもあるが,概して少ない疾患である.
【病因・発症機序】顎口虫の第1中間宿主はケンミジンコで,第2中間宿主(あるいは待機宿主)は有棘顎口虫では主にライギョ,剛棘顎口虫では主にドジョウ(アジアからの輸入品),ドロレス顎口虫では主にマムシやヤマメ,日本顎口虫では主にドジョウやヤマメなどの淡水魚であり,ヒトがこれらを刺身など生で摂取することによって感染する.東北地方では日本顎口虫の感染例でシラウオの生食歴が多いとされる.ヒトの体内に侵入した第3期後期幼虫は消化管壁を貫いて皮膚に移行し,幼虫移行症として皮膚腫脹や爬行症を生じる.まれに眼や中枢神経に迷入することがある.
【臨床症状】幼虫が移行する部位や深さによって症状が異なるが,有棘顎口虫では皮膚の深部を移動するので,突然,顔面や腹部,四肢に腫脹,発赤,硬結などが出現し,数日で自然に消褪してまた別の部位に同様の症状が出現することが多い.剛棘顎口虫,日本顎口虫,ドロレス顎口虫では線状の浮腫性紅斑が出現して蛇行状に移動する皮膚爬行症の臨床像(図30-4)図をとることが多い.皮疹部には瘙痒や疼痛を伴うことが多い.腹痛や嘔気などを伴う場合もある.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】皮膚爬行症を生じる疾患(旋尾線虫幼虫症,Manson孤虫症,鉤虫症など
関連リンク
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