病態
循環器疾患に関連する皮膚病変には,①皮膚病変を示す病因が同時に循環器疾患を引き起こす場合と,②循環器疾患によって皮膚病変を生じる場合とがある.皮膚病変を正しく診断することで生命にかかわる循環器疾患を発見できることがあり,皮膚科医の果たす役割は大きい.
膠原病,代謝異常症,先天性結合組織疾患などには,皮膚症状を示し循環器疾患を引き起こす可能性のあるものが多数存在する(表33-2)図.これらの疾患については,各項を参照されたい.以下,主に循環器疾患およびその治療によって生じる皮膚症状について解説する.
診断
【問診,理学所見】①家族歴,心疾患の既往歴および血管系IVR(interventional radiology),抗凝固薬内服などの治療歴を確認する必要がある.②動悸・息切れ,呼吸困難,浮腫,四肢の冷感,チアノーゼなどの有無を聴取する.③血栓症が原因となる疾患が多いため,脳梗塞などの既往がないかを問診する.
【皮膚の臨床症状,検査からの診断】
1.感染性心内膜炎
主に亜急性感染性心内膜炎に伴う皮膚症状として,Osler結節とJaneway斑が知られている.Osler結節は指趾腹側,手掌に好発する有痛性紅斑ないし紅色丘疹で,Janeway斑は母指球部や小指球部に生じる無痛性の淡紅色斑である.ともに菌血症に起因する皮疹と考えられており,黄色ブドウ球菌によることが多い.感染性心内膜炎の約15%の症例にみられる.
2.深部静脈血栓症(図33-3)図
下肢の深部静脈に血栓を生じた状態である.片側の下肢に急速に浮腫を生じ,発赤や圧痛を伴う.血栓が遊離して肺塞栓を生じると致死的病態となる.静脈血栓症の危険因子として肥満,手術後,長期臥床,妊娠,外傷・熱傷,悪性腫瘍,ホルモン療法などがある.診断にはDダイマー検査や下肢静脈超音波検査が有用である.
3.コレステロール結晶塞栓症(図33-4)図
動
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