診療支援
患者説明

非弁膜症性心房細動に対する抗凝固療法(DOAC治療)
寺井和生
(西新橋クリニック・副院長)

1.現在の病状・病態

 心房細動は加齢に伴い増加する頻脈性不整脈で,当初は発作性(ときどき発生し1週間以内に停止)に起こり,年齢が進むにつれて持続性(1週間以上持続)あるいは永続性(常に心房細動である状態)になっていきます.心房細動は全人口の0.5~1.5%が罹患しており,珍しい病気ではありません1).その原因は,高血圧,糖尿病,心不全(弁膜症,心筋症,心筋梗塞など),生活習慣(飲酒,喫煙,肥満など),加齢,甲状腺機能亢進症などで,心房への負担が原因となり,心房細動の予防や治療には,生活習慣改善や原因疾患に対する治療により心房への負荷を減らすことが重要です.心拍のリズムが不規則になるため動悸の自覚症状を伴うことが多く,強い不安感を伴うことがありますが,合併症がなければ生命に危険を及ぼすことはなく,基本的には良性の不整脈です.しかし,合併症として脳梗塞などの動脈塞栓症,頻脈による心不全などがあり,予防のために,血液をサラサラにする治療(抗凝固療法)と脈拍に対する治療(心房細動発作を抑制する薬や脈拍数をコントロールする薬)の併用が大切です2).特に,心房細動による脳梗塞は重症化することが多く,発症すると1年以内に約半数が命を落としたり寝たきりになったりと非常に予後不良な疾患であり,予防が大切です.

 従来,抗凝固療法としてワルファリンが使用されてきましたが,その内服量調整方法は容易ではなく,さらに副作用である出血のリスクが少なくありませんでした.2011年から新規経口抗凝固薬である直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant;DOAC)の使用が可能となり,ワルファリンと同等の脳梗塞予防効果(脳卒中または全身性塞栓症の発現はワルファリン内服群で1.71%/年,DOACであるダビガトラン300mg内服群で1.11%/年)を有する一方で脳出血のリスクは半分以

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