日本での臨床実務で知っておきたい8つの原虫症の概略を説明する.
■トキソプラズマ症
トキソプラズマ症はトキソプラズマ原虫を病原体とする人獣共通感染症(ヒトは中間宿主)で,世界中に分布する重要な寄生虫疾患である.臨床症状は感染時期や感染者の免疫状態に左右される(日和見感染症).本症は初感染の時期の重要性に鑑み,後天性感染と先天性感染に分けて考える.
後天性感染は,経口感染(豚や羊肉を生食してシストを摂取,またはネコの糞中の感染型オーシストを誤って摂取)によるもので,健常者が初感染した場合は,不顕性感染に終わることが多い(約10~20%の患者は,感冒や伝染性単核球症のような症状を呈する)が,生涯にわたり原虫を保有することになる.ただし他人への感染源になることは,妊娠時の経胎盤感染を除けば,通常ありえない.
この後天性感染で臨床上問題になるのは,主に①免疫不全者と②妊婦の初感染の2つの場合である