病態
胃・十二指腸粘膜の粘膜筋板を越える深い組織欠損をきたす病態
異常値
・上部消化管造影 潰瘍ニッシェ,粘膜皺襞集中像
・内視鏡 潰瘍の性状診断,質的診断(部位,個数,深さ,ステージ分類,露出血管の有無,良悪性の鑑別など)
・Helicobacter pylori検査(組織生検を要する検査) 潰瘍の組織生検による細菌培養検査,病理組織検査(鏡検法),迅速ウレアーゼ試験.陽性であれば原則除菌治療
・H. pylori検査(組織生検を要さない検査) 便中抗原検査,抗体検査,尿素呼気試験
経過観察のための検査項目とその測定頻度
●内視鏡(出血性潰瘍) [急性期]止血確認まで適宜 [回復期]2~3カ月以内に施行
●内視鏡(通常潰瘍) [急性期]1回 [回復期]2カ月以内に1回 [治癒後]1年ごと
●H. pylori除菌治療施行時 [除菌治療前]1回 [除菌治療後]治療終了後4~6週以降に1回
診断・経過観察上のポイント
①出血性潰瘍の場合には止血処置を併せて行う.②止血後は良悪性の鑑別が最も重要であり,必ず周辺粘膜から生検を行う.③H. pyloriを除菌することで潰瘍の再発率を低下させることが可能でありH. pylori陽性潰瘍では原則除菌治療を行う.④わが国の消化性潰瘍のなかで,H. pyloriが原因の潰瘍に次いで多いのは,非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)あるいは低用量アスピリン(LDA)使用に伴う潰瘍である.確認のため患者から薬剤使用歴の聴取を行う.これらの薬剤が原因と考えられ,継続使用が必要と判断される場合には潰瘍再発抑制のためプロトンポンプ阻害薬もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)を併用して使用する.⑤除菌や十分な酸分泌抑制治療を行っても難治であれば,Zollinger-Ellison症候群やCrohn病の可能性を考慮して専門医への紹介を検討する.⑥
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