診療支援
治療

心不全・心原性ショック
heart failure・cardiogenic shock
太田 凡
(京都府立医科大学教授・救急災害医療システム)

A.ER診療のポイント

●心不全とは,心臓のポンプ機能が低下し,前負荷(静脈還流),後負荷(血管抵抗)の変化に対応できず循環動態が破綻した状態である.肺循環または体循環にうっ血をきたした心不全をうっ血性心不全という.

●心不全に対し生体は,心拡張,心肥大,交感神経緊張,内分泌機能などで代償をはかる.しかし,その代償機転が破綻すると症状が顕在化する.心原性ショックとは,最も重篤な心不全であり,心拍出量の低下から末梢循環不全に陥った病態である.

●肺うっ血・肺水腫の程度に応じて,軽度の息切れ(運動耐容能の低下),夜間の発作性呼吸困難,起坐呼吸,ピンク色の泡沫状喀痰,といった症状が出現する.呼吸音の異常は,吸気終末に両下肺野で聴取されるわずかな乾性ラ音から,全肺野で聴取される喘鳴まで様々な程度で認められる.体うっ血による症状としては,顔面や下腿の浮腫が代表的である.

●原因となる病態としては高血圧症と冠

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