診療支援
治療

運動麻痺
motor palsy
永山正雄
(国際医療福祉大学教授・熱海病院神経内科)

A.ER診療のポイント

●主に神経所見から病変部位を推測(局在診断)し,主に病歴や運動麻痺の分布から血管障害,感染症などの原因診断(質的診断)を行い,総合診断に至る.

●緊急を要する病態,特に頸髄損傷やGuillain-Barré症候群など呼吸筋麻痺を合併しうる疾患,重症脳血管障害,血栓溶解療法適応の超急性期脳梗塞,単純ヘルペス脳炎など,生命に関わる状態,重症化を回避しうる治療がある状態の評価と治療を優先する.


B.最初の処置

1病歴

①発症様式(急性,亜急性,慢性,反復性),症状の推移(悪化,改善),前駆症状や随伴症状,既往歴,手術歴,職歴,服薬状況など問診による病歴評価が重要である.

②運動麻痺は個人により表現の仕方が様々であり,「しびれた,重い」と表現される状態が運動麻痺であったり,「歩けなくなった」のが麻痺ではなく感覚障害によることもある.

2身体所見

 全身状態の評価の後,意識,言語,脳神経(眼底,視野,瞳孔,眼位,眼球運動),運動系(錐体路,錐体外路,協調運動),感覚系,反射(深部反射,病的反射),髄膜刺激徴候,自律神経系について簡潔に神経所見の評価を行う.特に運動麻痺の有無と分布の評価が重要である.

①運動系については,筋力の客観的で経時的な評価のために徒手筋力テスト(manual muscle testing:MMT)を用い,0~5の6段階で表す(表1).麻痺の分布(左右差・上下肢差,片麻痺・四肢麻痺・単麻痺,呼吸・嚥下障害,近位筋・遠位筋優位)を評価し,中枢(脳,脊髄),末梢(末梢神経,神経筋接合部,筋)などの障害部位診断を迅速に行うことが重要であり,個々の筋力の評価に固執し,いたずらに時間が経過することは避ける.なお重力に対する反応により区別されるMMT3とMMT2の判定は客観性が比較的高いが,その他は検者の主観により影響される.

②脳梗塞超急性期における血栓溶解療法の適

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