診療支援
治療

黄疸
jaundice
山畑佳篤
(京都府立医科大学附属病院・救急医療部副部長)

A.ER診療のポイント

●黄疸とは,ヘムの代謝により産生される色素であるビリルビンが血中に増えたことにより,皮膚や眼球結膜が染色されることで顕在化する症候である.黄疸をみたら緊急処置が必要な致死的な疾患が含まれると心得る.

●ビリルビンはヘム分解により生成された非包合型(間接型)ビリルビンと,肝臓でグルクロン酸包合を受けて胆汁に排泄される包合型(直接型)ビリルビンに分けられる.間接型-直接型の分画検査は障害レベルを鑑別するため有用.

●黄疸は発生機序により以下の5つに分類される.①溶血性,②肝細胞性,③閉塞性(肝内,肝外),④肝内胆汁うっ滞性,⑤体質性.特に閉塞性のものは緊急ドレナージが必要となる可能性を考える.

●閉塞+細菌感染は敗血症が急速進展するため超緊急,肝外閉塞で膵障害を合併すれば重症度が高い,広範囲の肝細胞障害による肝不全は致死的,と肝に銘じる.1に感染,2に膵炎,3・4がなくて5に肝不全(に至るような肝炎).

●閉塞による胆道系の拡張,胆嚢周囲への炎症の波及の有無など,緊急処置を要する病態を見抜くには腹部超音波検査が有用.黄疸を見たらまず超音波.


B.最初の処置

1第1印象

①患者との接触時にまず第1印象を把握する.皮膚黄染はあるか,ある場合はどれくらいの濃さかを認識する.血清総ビリルビン値が3mg/dLを超えると皮膚黄染として認識できる.眼球結膜の黄染のみの場合は血清総ビリルビン値は2~3mg/dLレベルである.

②同時に,意識障害はないか,SIRS(全身性炎症性反応症候群:systemic inflammatory response syndrome)を疑わせる頻呼吸などの徴候はないか,腹痛などの随伴症状による身体運動の障害(体幹部を前屈させている,歩行時に振動が腹部に伝わり跛行を生じる,など)がないか,など緊急性のある徴候を把握するよう努め,おかしい,と思ったら以後の診療

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