診療支援
治療

自然気胸
spontaneous pneumothorax
大槻穣治
(東京慈恵会医科大学准教授・救急医学)

A.疾患・病態の概要

●気胸とは壁側胸膜と臓側胸膜で囲まれた陰圧の胸腔内に空気が入り込んだ状態のことであり,放置すると流入した空気により患側の胸腔内が陽圧となり,縦隔を健側に圧排,肺が虚脱し,さらには静脈環流障害から心拍出量が低下して閉塞性ショック(obstructive shock)をきたす(=緊張性気胸:tension pneumothorax).

●気胸は外傷性気胸(「胸部外傷」の項参照,)と外傷以外の原因で臓側胸膜が損傷し肺から空気が漏出する自然気胸に分類され,さらに自然気胸は基礎疾患をもたない特発性自然気胸(idiopathic pneumothorax)と原因となる何らかの疾患を有する続発性自然気胸(secondary pneumothorax)に分類される.

●特発性自然気胸の多くはblebやbullaが破裂することにより発症する.体型的に長身,やせ型の若年男性に多く,喫煙は発症率を高める.

 *肺胞は限界弾力板で覆われ,さらに胸膜弾力板,臓側胸膜で覆われている.bullaとは肺胞壁が破壊され融合した肺嚢胞であり,blebとは臓側胸膜内の胸膜弾力板と限界弾力板の間の含気空間で,bullaが増大し限界弾力板を破りblebに進展すると考えられ,さらに胸膜弾力板,臓側胸膜が破れると気胸となる.

●続発性自然気胸の原因となる基礎疾患としては肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患の他,膠原病,Marfan症候群,月経随伴性気胸などがある.

 *月経随伴性気胸:異所性の子宮内膜が胸膜や横隔膜に存在し,月経時にこれが剥がれ落ちることにより発症する気胸.90%以上は右側に発生し典型例では月経開始3日前から5日後までの間に発症.


B.最初の処置

①バイタルサインに異常をきたしているもの(緊張性気胸)は胸部X線の結果を待たず理学的所見から診断し,ただちに胸腔ドレナージを施行する(「胸腔穿刺法と胸腔ド

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