A.疾患・病態の概要
●急性冠症候群(ACS)は冠動脈粥腫の破綻から血栓形成が生じて発症する.閉塞血栓となればST上昇型となり,非閉塞であれば非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)あるいは不安定狭心症にとどまる.
●後者は,区別することが難しい場合が多く,非ST上昇型ACSとして,まとめて扱うことが多い.
B.最初の処置
救急外来における初期10分間の診療についてはSTEMIと共通である(「STEMI」の項を参照,→).
C.病態の把握・診断の進め方
1病歴が重要
①心筋梗塞では通常30分以上持続する前胸部の胸痛や絞扼感である.ただし,STEMIと異なり,非ST上昇型ACSでは一時的に閉塞あるいは高度狭窄で症状は軽度となっていることがあるので注意を要する.
②不安定狭心症では,20分以内に症状は消失しているので,多くは来院時に症状がない.短時間で病歴聴取を行い,急性冠症候群を疑うことが肝要である.症状がないからとそのまま帰宅させてはならない.
212誘導心電図は繰り返して記録
①胸部誘導のST低下の場合には,後壁梗塞のST上昇を見逃さないようにする.また,四肢誘導は軽微の変化であることが多く,胸部誘導でST低下がある場合には,四肢誘導でST上昇がわずかでもないか確認することが重要である.
②非ST上昇型ACSの診断は,心電図の変化が乏しい場合には困難な場合が多く,心電図モニターをしながら心筋マーカー再測定や12誘導を再記録することが勧められる.時間経過とともにST変化が明らかになることがある.
③胸痛患者を1回だけの心電図検査の確認で帰宅させないことで肝要である.以前の心電図との比較は,変化をとらえるのに有用である.
3血液生化学的検査
心筋逸脱酵素であるCPKやCK-MBが正常値の2倍以上の増加を示すことにより診断される.最近では,心筋特異性が高いトロポニンT・トロポニンIを用い,正常上限(99%