診療支援
治療

急性副腎不全(副腎クリーゼ)
acute adrenal crisis
岡田保誠
(公立昭和病院・救命救急センター長)

A.疾患・病態の概要

●副腎不全は,内因性の副腎皮質ホルモン分泌が生体の必要量以下に低下した状態である.副腎不全は原発性副腎不全と二次性副腎不全に分類される.原発性副腎不全においては副腎皮質が障害されており,グルココルチコイドもミネラルコルチコイドもともに分泌不全に陥っている.一方,二次性副腎不全においては視床下部-下垂体系の障害によってCRHまたはACTHの分泌不全が生じている.レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系は正常なので,二次性副腎不全においてはグルココルチコイド産生のみが低下している.このように副腎不全は,生体の生存にとって欠かすことのできない副腎皮質ホルモンが絶対的ないし相対的に不足している状態であるが,その程度や重篤度は病態によってまちまちである.

●急性の経過で副腎不全に陥ることを急性副腎不全といい,その多くはショックなど重篤な状態に至ることから副腎クリーゼともいう.グルココルチコイドは血管平滑筋の緊張性維持に関与しており,これの欠乏は血管抵抗低下をもたらす.またグルココルチコイドは炎症性サイトカインに対しネガティブフィードバック作用を持つので,これが欠乏すると高サイトカイン血症が不適当に持続することになり,血管抵抗低下は助長される.さらに副腎髄質でのコルチゾール濃度の低下はカテコールアミン合成障害の原因にもなる.これらの機序により二次性急性副腎不全でもショックが生じる.グルココルチコイドはADH分泌阻害作用を有しているため,二次性急性副腎不全ではSIADH(抗利尿ホルモン分泌異常症)に近い病態となり,低ナトリウム血症はあっても脱水は顕著でないことが多い.一方,原発性急性副腎不全においてはミネラルコルチコイド欠乏も伴うために,ナトリウム喪失と脱水も著明に生じている.したがって原発性急性副腎不全においては,より重篤な循環不全がみられることが多い.

●急性副腎不

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