A.疾患・病態の概要
●結核菌感染症とはMycobacterium tuberculosisによる一連の感染症を指す.M.tuberculosisはヒトの肺胞内へ取り込まれ,増殖し,マクロファージに貪食される.次いで,マクロファージ内でさらに増殖し,所属リンパ節へと移行,血中へと移行し,全身,肺や骨髄,髄膜などへ伝播する.免疫の成立により結核菌は抑制されるが,潜在的には生存し続け,なんらかの契機により再活性化し感染症を発症する.一般に感染例の約10%が生涯のうちに臨床的に明らかな結核を発症し,そのうちの約50%が感染後1年以内に発症するといわれている.実際の臨床で遭遇する結核の多くは,潜在していた結核の表面化,再発である.
●発症した場合,75%程度は肺結核として発症する.症状は胸痛,喀血,喀痰の出現,遷延する咳嗽などの呼吸器症状や,発熱,悪寒,夜間盗汗,食欲低下,体重減少といった全身症状まで多様な症状を示す.一方,残りの約25%は肺外結核と呼ばれ,結核性胸膜炎やリンパ節炎,髄膜炎など多岐にわたる.特にM.tuberculosisが全身に播種した状態である粟粒結核は,非常に重篤な病態として知られている.また肺外結核症例において,肺結核が高率に合併することも知られている.
●確定診断は,喀痰などの各種検体を用いた抗酸菌塗抹・培養検査を行い,細菌学的判断により行う.
●結核菌特異マーカー検査として,結核菌特異蛋白刺激性遊離ガンマインターフェロン(γ-IFN)測定(クォンティフェロン検査)が,結核感染の接触者スクリーニングや医療関係者の結核管理に利用されている.しかし,既感染と現行感染の区別が完全にはできず,あくまで補助診断の一つと位置づけられている.なお本検査はBCGワクチン接種の影響を受けない.
●ツベルクリン反応とは,結核菌感染の抗原の代替として精製ツベルクリン薬を用い,これを皮内投
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