診療支援
治療

呼吸器疾患
pulmonary diseases
萩原弘一
(埼玉医科大学教授・呼吸器内科)

A.疾患・病態の概要

●慢性呼吸器疾患の急性増悪で重要なものは,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の急性増悪と,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の急性増悪である.両者はともに急性増悪と命名されているが,病態,疾患概念ともに全く異なる.

●COPDは,主に喫煙を原因とし,気管支拡張薬で完全には回復しない非可逆性気流制限を主徴とする慢性疾患である.COPD患者において,感染,心不全などを契機として急速に呼吸状態が悪化する状態を急性増悪という.特に感染は原因として重要で,COPD急性増悪をみたら,肺炎を主体とした感染の合併を考慮する必要がある.慢性Ⅱ型呼吸不全患者の場合,CO2ナルコーシスによる意識障害がみられることも多い.

●IPFは,数年~十数年の経過をたどる原因不明の慢性疾患である.進行を停止する,または病態を改善させる治療法は存在せず,生存期間中央値が5~6年という予後不良疾患である.IPF患者では,両肺野の新たな浸潤影の出現とともに急速な呼吸不全の進行がみられることがあり,これをIPF急性増悪という.肺炎,肺血栓塞栓症,気胸,心不全など,原因の明確なものはIPF急性増悪に含まない.原因不明のもののみがIPF急性増悪であり,具体的には「1か月以内の経過でPaO2が安定期の10%以上の低下,胸部X線上,両側性すりガラス陰影・浸潤影の出現や増加があり,明らかな肺炎像や心不全を認めない」病態として定義される.過去のPaO2のデータが不明な場合など診断に十分なデータが得られない場合は,病状を総合的に判断して診断する.

●なんら基礎病変がみられない肺に急速に進行するびまん性肺胞障害を認める急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia:AIP)

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