診療支援
治療

急性脳症
acute encephalopathy
奥村彰久
(順天堂大学准教授・小児科)

A.小児ならではのポイント

●急性脳症の主たる症状は,意識障害と痙攣である.異常言動(熱せん妄)も1~2割の患者にみられる.

●意識障害が最も重要な症状である.重篤な意識障害は把握が困難でないが,軽度の意識障害は必ずしも容易に把握できるとは限らない.特に乳児や重い基礎疾患を有する場合では,軽度の意識障害の有無を判定するのはしばしば困難である.普段の様子との違いの有無を保護者に尋ねる必要がある.

●近年,二相性の経過を辿る脳症がまれでないことが明らかになった.二相性の経過を辿る脳症は,一般に発熱に伴う長い痙攣で発症し,翌日には意識障害がごく軽度にまで回復する.しかしその数日後に意識障害の増悪と痙攣の群発が出現する.発症3日間は画像異常を認めず,早期診断は今のところ不可能である.このような急性脳症の存在を常に念頭におく.

●痙攣は約8割の患者に合併する.特に10分以上痙攣が続いた場合には,意識状態が完全に回復するか否かに注意する.また,意識がおおむね清明になった場合でも熱性痙攣と安易に判断せず,上述のような二相性の経過を辿る急性脳症を常に念頭において診療する.

●異常言動では,その持続が数十分以上のものや断続的に長時間繰り返すものは急性脳症の可能性が高い.

●急性脳症に類似した症状で発症する疾患の中には,化膿性髄膜炎・代謝異常・内分泌疾患など特異的治療が可能な疾患がある.したがって安易に急性脳症と決めつけず鑑別診断を十分に行うべきである.


B.最初の処置

1バイタルサインの確認と静脈ラインの確保

①意識障害が明らかな場合は,直ちにいわゆる救急のABCDE,A(Airway/気道)・B(Breathing/呼吸)・C(Circulation/循環)・D(Dysfunction of CNS/中枢神経系障害)・E(Environment/体温)の評価と管理を開始する.まずA・B・Cで直ちに生命を脅か

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