A.病態の把握
1中毒物質と含有物
エタノール(エチルアルコール)は,分子量;46,分布容積:0.54±0.05L/kgで,酒類をはじめとして様々な飲料の他,工業用品(溶剤,防腐剤,塗料),薬効成分の吸収を促進するために,香水,整髪料,化粧水にも含まれ,また医療用としても殺菌,消毒剤に用いられる.特殊なものとして,ドリンク剤の中にも相当量が含有(例:サモンローヤルゼリー内服液 1.57g/瓶)されている.
2中毒の発生機転
大量の飲酒によるものがほとんどであるが,小児の化粧水などの誤食例もある.
3特殊な病態
特殊なものとして,念頭に置かねば見逃してしまう(長期間のアルコール多飲患者が通常の酒酔い状態とは異なる意識障害をきたした時に考慮する)Wernicke(ウェルニッケ)脳症や離脱症候群がある.
4合併症
アルコール酩酊状態のための,転倒や墜落による外傷事故,交通事故,溺水,低体温症,凍死は多い.外傷患者の14%が飲酒中であったという報告や,アルコールが原因で,ERに搬入された患者305人のうち117人(38%)が外傷を合併していた報告がある.
5各種アルコール飲料のエタノール濃度
ビール:500mLでアルコール量22g,清酒:180mLで同20g,ウイスキー/ブランデー:60mLで同20g,ワイン:120mLで同12g程度である.
B.体内動態
1吸収と分解と酵素
①消化管から速やかに(ピーク濃度:30~120分)吸収され,変化を受けずに血中に出現する.腎などでも代謝されるが,90%は肝で代謝される.肝では,アルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに,次いでアセトアルデヒド脱水素酵素により酢酸に酸化され,最終的には水と二酸化炭素に分解され,尿と呼気に排泄される.
②日本人(モンゴロイド)は遺伝的に代謝能力の弱い方のアセトアルデヒド脱水素酵素を持つものが多い(45%).アルコールの量が多す
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