今日の診療
内科診断学

動悸,脈拍異常
佐々木 康之


動悸,脈拍異常とは

■定義

 動悸(palpitation)とは,心臓の拍動を不快と自覚することを総称し,心悸亢進とほぼ同義語で用いられる.脈拍が正常であっても,心臓の拍動や鼓動が強いとき,体調や感受性の違いにより,これを不快と感じれば,動悸である.

 動悸のなかに他覚所見としての脈拍異常が含まれる.

■患者の訴え方

 患者の訴え方はさまざまであり,「心臓がドキンとする」「ドキドキする」「心臓が一瞬止まる(つまずく)ようになる」「脈が速くなる」と訴えたりする.

 以上の愁訴は,脈拍異常が瞬間的な期外収縮の場合に多く,頻脈性不整脈が長く続く場合には,「息苦しい」「胸苦しい」と訴える場合もあり,狭心症症状や心不全症状と紛らわしい場合もあるので注意が必要である.

■患者が動悸を訴える頻度

 循環器疾患の3大愁訴は,胸痛,呼吸困難(息苦しい),動悸であり,動悸は循環器外来患者のほぼ20%が訴える.患者の訴え方は,前述のように多岐にわたっており,通常の外来診察では,動悸発作が終了(非発作時)していることが多く,救急外来受診患者では,動悸発作中が多い.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 図3-191に示すように,①生理的な原因,②非心疾患性の原因(これをさらに,心因性,二次性に細分類する),③心疾患性の原因(これをさらに,非不整脈性,不整脈性に細分類する)に分けて説明する.

 また,これらの原因疾患として主なものを表3-195に示す.

●生理的な原因

 健常者でも,内因性のカテコールアミン(CA)が分泌されるような運動,労作,精神的ストレス,精神的興奮時には,心拍数の増加,左室収縮力の増加,血圧上昇が生じ,心臓の存在感,拍動感を自覚することがしばしばある.これを不快と感じれば,動悸ということになる.体調が不良なときには不快に感じやすい.

●非心疾患性の原因

1. 心因性

 一般に心臓神経症の範疇に入るもので,最

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