今日の診療
内科診断学

4か月続く慢性咳嗽
62歳 男性
仁多 寅彦


現病歴:4か月ほど前から咳嗽を自覚していたが,咳以外の症状がないため放置していた.2週間前から血痰が出現し,その後毎朝少量ではあるが血痰を認めるため,精査を希望して受診した.

既往歴:6歳時に肺結核(治療歴は不明),常用薬なし.

生活歴:22歳より事務職.喫煙歴20〜62歳,20本/日.飲酒歴はビール350mLと日本酒1合を週5回程度.

家族歴:特記事項なし.

身体所見:意識は清明.身長167cm,体重71kg(体重減少なし),体温36.7℃,脈拍68回/分(整),血圧122/76mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 98%(室内気).頸部リンパ節を触知しない.咽頭・扁桃・口腔内は異常なし.心音に異常を認めない.呼吸音は正常で左右差もなく,強制呼出での呼気終末でも喘鳴を聴取しない.腹部は平坦・軟で肝・脾を触知しない.ばち状指なし.下肢に浮腫なし.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

肺結核

肺癌

頻度の高い疾患

気管支喘息・咳喘息

非結核性抗酸菌症

肺真菌症

多発血管炎性肉芽腫症

好酸球性肉芽腫性多発血管炎

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 咳嗽は普遍的な症状であり,受診理由として最も頻度が高い症候の1つである.ほぼすべての呼吸器疾患は咳の原因となり,消化器領域,循環器領域,耳鼻科領域の疾患も原因となりうる.そのため,医療面接により原因疾患を推定していくことが重要であり〔症候・病態編「咳・痰」表3-163参照〕,咳嗽についての聴取以外にも随伴する諸症状(呼吸困難,胸痛,胸やけ,発熱,体重減少など)を,原疾患を想定しながら丹念に聴取していく必要がある.

 咳嗽は持続期間により,急性咳嗽(3週間未満),遷延性咳嗽(3〜8週間未満),慢性咳嗽に分類される.急性咳嗽の原因の多くは感冒を含む気道の感染症であり,持続時間が長くなるにつれて急性の感染症の頻度は低下

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