診療支援
診断

脾腫
splenomegaly
清澤 研道
(相澤病院消化器病センター 名誉センター長/肝臓病センター 顧問)

脾腫とは

定義

 脾臓は,健常小児では触れることはあるが,成人では触れることはほとんどない.通常,触知できるようになるには正常の大きさの2倍になっていることが多い.触診上注意すべきことは,仰臥位のみならず右下横臥位でも触診することである.触知しない場合でも,打診で脾濁音界の拡大を知ることも大切である.

 超音波検査で容易に脾の大きさを測定でき,長軸が10cm以上ある場合に脾腫ありと診断する.触診上,脾腫が臍を越える場合を巨脾という.慢性の脾腫は一般に難治性疾患が多い.

患者の訴え方

 巨脾以外の場合,患者はほとんど脾腫を自ら訴えることはない.巨脾になると左上腹部膨満感が出現する.特に,食事中か食後に胃の膨満感を訴える.左季肋部痛を主訴にすることは稀である.

患者が脾腫を訴える頻度

 脾腫は急性ウイルス感染症では約50%,重症細菌感染症で約20%,慢性肝疾患で50〜70%,溶血性貧血で約70%,血液造血器疾患で約40%に出現する.このうち,自ら左季肋部にしこりの存在を訴えるのは,特発性骨髄線維症,慢性骨髄性白血病,本態性血小板血症などの骨髄増殖性疾患が多い.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

 脾腫自体は病気ではない.それをきたす病態を明らかにすることが重要である.

 急性に脾腫が生じて,一過性で終わる場合は急性ウイルス感染症,細菌感染症など病原微生物の感染症の初期によくみられる.臨床経過により変化が速いので,早期に診断を決定し,的確な治療方針を決めることが大切である.

 慢性の脾腫は難治性の疾患が多い.頻度的に多いものとして,門脈圧亢進によるものと血液・造血器疾患によるものが挙げられる.図1に脾腫の原因となる病態を列挙する.表1に脾腫をきたす代表的疾患を挙げる.

病態・原因疾患の割合

(図2)

 脾腫をきたす疾患はきわめて多岐にわたり,臨床的に軽症のものから重症のものまで幅が広い.脾腫が慢性化すれ

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