診療支援
診断

意識消失
20歳代 男性
甲谷 太郎
(北海道大学大学院循環病態内科学 客員研究員)
安斉 俊久
(北海道大学大学院循環病態内科学 教授)

現病歴:数か月前より立位時にふらつき,眼前暗黒感を自覚することがあったが,自然に軽快するため様子をみていた.本日,座位から立位になった際に動悸を自覚したのちに意識消失をきたしたため外来受診となった.

既往歴:生来健康で特記すべきことはない.

生活歴:デスクワーカー,機会飲酒,喫煙歴なし.

内服歴:アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia; AGA)治療薬として9か月前からミノキシジルを内服,2か月前からフィナステリドを内服している.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:来院時意識は清明.身長178cm,体重82kg,血圧116/48mmHg(右上肢),109/47mmHg(左上肢),脈拍59回/分(整).頸静脈の怒張を認めず.心音に異常を認めず,呼吸音に左右差なし.腹部は平坦・軟で,肝を触知せず.下腿浮腫を認めず.神経学的所見に異常を認めず.

【問題点の描出】

生来健康な20歳代男性が数か月前から起立時のふらつき,眼前暗黒感を自覚するようになり,今回は意識消失をきたしたため受診となった.来院時の診察上,バイタルサインと身体所見に明らかな異常を認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・心筋梗塞

・大動脈解離

・肺塞栓症

・頻脈性不整脈

・徐脈性不整脈

・消化管出血による循環血漿量低下

頻度の高い疾患

・起立性低血圧

・脱水による循環血漿量低下

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 来院時は意識清明であり,一過性の血圧低下による脳血流低下が意識消失の鑑別として考えられた.意識消失で受診した患者に対しては,まず緊急性のある疾患の有無について考える必要がある.意識消失の原因で最も見逃してはいけない疾患としては,心血管系疾患が挙げられる.具体的には,心筋梗塞徐脈性不整脈頻脈性不整脈大動脈解離肺塞栓症となる.しかしながら本症例においては,来院時の両

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