診療支援
診断

静脈怒張
56歳 女性
矢崎 義行
(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科)
中村 正人
(東邦大学医学部循環器疾患低侵襲治療学講座 教授)

現病歴:半年前より両側下腿浮腫と労作での息切れを自覚していた.2週間前より,下肢浮腫増強,疼痛も認め,軽労作で息切れ,動悸を認めたため受診となった.

既往歴:高血圧症(5年前より),脂質異常症(5年前より).

生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴は機会飲酒.

家族歴:父親:高血圧症.

身体所見:意識は清明.身長163cm,体重64kg,脈拍90回/分(整),血圧145/118mmHg,呼吸数20回/分,SpO2 94%(room air).眼瞼浮腫,甲状腺腫大を認めない.頸部リンパ節を触知しない.頸静脈怒張を認める.心音 Ⅲ音聴取.呼吸音は清.腹部は平坦・軟で,肝・膵を触知しない.両前脛骨部に浮腫著明,発赤認める.

【問題点の描出】

高血圧既往のある中年女性.半年前より両下肢浮腫と息切れを認めていたが,2週間前より増強したため受診.血圧上昇,SpO2軽度低下,頸静脈怒張を認める.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・うっ血性心不全

・肺塞栓症

・虚血性心疾患

・静脈血栓症

・慢性腎不全

頻度の高い疾患

・うっ血性心不全

・静脈血栓症

・静脈瘤

・慢性腎不全

・肝硬変

・甲状腺機能低下症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 本症例は半年前から比較的慢性的な経過であり,バイタルサインは比較的保たれており,緊急で救命処置を要する状態ではないため,医療面接,身体診察を詳しく進めて鑑別していく.

 患者に静脈怒張が生じた場合,静脈怒張のみを主訴とする患者は比較的少なく,その原因疾患による症状を伴うことが多い.本症例では,下肢浮腫に労作時息切れ,動悸である.〈p〉静脈怒張をみたときは,まずはその原因が心臓であるか,心不全徴候の有無を評価する必要がある

 心音でⅢ音を聴取し,頸静脈怒張を認めることから,心不全徴候としてとらえることができる.また,血圧は保たれているが,〈p〉脈圧が低下しており,低心拍出が考え

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