診療支援
診断

腹痛
68歳 男性
西川 秀司
(市立札幌病院 院長)

現病歴:夕方から突然腹痛が出現.症状が増悪し翌日に受診.

既往歴:42歳時に虫垂炎,手術.65,67歳時に癒着性腸閉塞.

生活歴:アルコール(−),タバコ(−).

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長173cm,体重56.3kg,体温37.3℃,脈拍90回/分(整),血圧130/80mmHg.腹部平坦,全体に圧痛(+),筋性防御(−),反跳痛(−),腸蠕動音の聴取は認めるが,金属音の聴取(−).

【問題点の描出】

手術歴,腸閉塞の既往歴のある68歳男性,突然発症した腹痛.微熱を認め,腹部所見は軽度の圧痛のみ.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・絞扼性腸閉塞

・急性膵炎

・腫瘍性病変

・消化管穿孔

頻度の高い疾患

・急性胃腸炎

・潰瘍性病変

・急性胆道炎

・過敏性腸症候群

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 まずは全身状態の確認が最も重要である.早急に診断,治療を要する急性腹症か否かの判断が必要となる.

 腹痛は消化器内科を受診する患者の主訴で一番多いものであり,その原因も多岐にわたる.順次考察し,精査していく.

 本症例は微熱があり,炎症の存在が疑われるが,身体所見から明らかな腹膜刺激所見もなく,バイタルサインも問題なかった.

‍ 急性腹症は否定的であった.また,嘔吐,下痢などは認めず胃腸炎は否定的であった.微熱を認め,炎症の存在が疑われ,機能性消化器疾患も否定的であった.

 手術歴,既往歴から腸閉塞を最も疑う.しかし,嘔吐や金属音の聴取がないなど典型的でない部分もあり,他の疾患の可能性も考えたうえで診療にあたる必要がある.

診断仮説(仮の診断)

腸閉塞

・腫瘍性病変

・潰瘍性病変

・急性膵炎

・急性胆道炎

・消化管穿孔

・急性胃腸炎

・過敏性腸症候群

必要なスクリーニング検査

 まずは初診時にすぐに施行可能な検査として採血,腹部単純X線検査,腹部超音波検査を施行する.

検査結果

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?