診療支援
診断

下痢
74歳 女性
津田 桃子
(北海道対がん協会札幌がん検診センター内科 部長)

現病歴:逆流性食道炎の診断でランソプラゾールを内服していた.その約半年後に軟便を自覚,1年後には下痢が出現した.下痢が改善せず来院した.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:喫煙歴なし,飲酒は機会飲酒程度.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長156cm,体重52kg,発熱なし,脈拍56回/分(整),血圧122/66mmHg,呼吸数15回/分,SpO2 98%(room air).腹部は平坦・軟で,肝・脾を触知しない.

【問題点の描出】

ランソプラゾールの内服継続で軟便,さらには下痢を認めている74歳女性.発熱はなく,全身状態も良好であるが,下痢でQOLが低下している.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・Crohn(クローン)病

・潰瘍性大腸炎

頻度の高い疾患

・感染性腸炎

・過敏性腸症候群

・薬剤性下痢

・術後下痢

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 下痢を主訴といっても,その程度により「しぶり腹」「水様便」「軟便」とさまざまな訴えがある.下痢で受診した患者で,すぐに救急処置をしないと命の危険が及ぶことは稀であるが,尿量減少や皮膚ツルゴール減少からわかる脱水症状の有無,激しい下血や著しい体重減少,高熱などの症状を伴う場合には重症であり,入院して検査を進める.高齢者などは下痢による脱水で重篤な全身状態になることも少なくなく,注意が必要である.

 下痢の診断では,腸管出血性大腸菌O157感染症のような,ただちに保健所に報告する必要があるものは最初に注意すべきである.そして,的確な病歴の情報収集が大切である.医療面接では,下痢の発生状況(発症時期,持続期間,回数),随伴症状(腹痛,悪心・嘔吐,発熱),糞便の性状(水様便,粘血便など)の聴取が重要である.家族や一緒に食事した人も同様に下痢があれば,感染性腸炎の可能性が高くなる.発熱は,炎症性腸疾患や感

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