診療支援
診断

腰痛
70歳 女性
宮田 誠彦
(国立病院機構京都医療センター整形外科 医長)

現病歴:約1か月前より腰痛が出現した.特に転倒などの外傷歴はない.近医を受診し,腰椎MRIにて腰椎椎間板ヘルニア(L5/S)の疑いがあると指摘された.鎮痛薬の内服や局所トリガーポイント注射などの保存的治療を受けてきたが,約2週前より徐々に腰痛が増悪し,起座や寝返りなどの動作が困難となってきた.自宅で安静にしていても腰痛が治らない.2日前より発熱(38℃台)が出現した.

既往歴:2型境界型糖尿病.悪性腫瘍の既往なし.

生活歴:教職歴45年.喫煙歴なし.飲酒の習慣なし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長160cm,体重55kg,体温38.2℃,その他血圧,脈拍,呼吸数などのバイタルサインは正常.腰部や殿部に圧痛なし.下位腰椎に叩打痛あり.腰椎の前屈や後屈は腰痛のためできない.下肢伸展挙上(SLR)テストは陰性.膝蓋腱反射やアキレス腱反射は正常.下肢の徒手筋力テストは正常.知覚障害や排尿障害はなし.

【問題点の描出】

特に外傷歴や悪性腫瘍の既往のない慢性経過の腰痛を発症した70歳女性.軽微な動作や安静時にも痛みが持続し,発熱を伴っている.下肢麻痺症状や排尿障害は認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・化膿性脊椎炎・椎間板炎

・転移性脊椎腫瘍(血液疾患を含む)

頻度の高い疾患

・腰椎圧迫骨折

・腰椎椎間板ヘルニア

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 軽微な体動でも増悪し,安静時にも継続する腰痛があり,脊柱(腰椎・仙椎や椎間板など)の不安定性病変や破壊性病変が示唆される.発熱を伴うことから感染性疾患を念頭におく必要がある.両下肢の筋力低下や知覚障害,排尿障害は認めず,神経学的には特に切迫した麻痺症状はない.

診断仮説(仮の診断)

化膿性脊椎炎・椎間板炎

・転移性脊椎腫瘍(血液疾患を含む)

・腰椎圧迫骨折

・腰椎椎間板ヘルニア

必要なスクリーニング検査

 血

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