診療支援
診断

末梢血行異常
42歳 男性
矢崎 義行
(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科)
中村 正人
(東邦大学医学部循環器疾患低侵襲治療学講座 教授)

現病歴:数か月前より歩行時に左下肢腓腹部の痛みが出現,歩行の中止で消失していた.次第に症状悪化し,100mの歩行でも疼痛が出現するため受診となった.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:会社員で営業勤務.喫煙歴30本/日を26年間.飲酒歴 ビール350mLを毎日.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長175cm,体重68kg,脈拍65回/分(整),血圧134/72mmHg,呼吸数14回/分,SpO2 98%(room air).頸部リンパ節触知せず.心音,呼吸音に異常なし.腹部は平坦・軟で,肝・膵を触知しない.左膝窩動脈以下で拍動触知不良.

【問題点の描出】

喫煙歴のある42歳男性.徐々に進行する左下肢の間欠性跛行が増悪し受診.左膝窩動脈以下で触知が不良である.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・急性動脈閉塞

・急性大動脈解離

・大動脈瘤破裂

・末梢動脈疾患

頻度の高い疾患

・下肢静脈瘤

・末梢動脈疾患

・深部静脈血栓症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 下肢の痛みで受診した患者に対して,〈p〉急性疾患か慢性疾患かを判断し,まずは緊急処置が必要な疾患であるかを判断する必要がある

 本症例では1か月前からの症状出現であり,慢性疾患が疑われる.早急な介入が必要な生命にかかわる疾患として,〈除〉急性大動脈解離大動脈瘤破裂急性動脈閉塞があるが,発症形式と痛みが持続していないことから否定的であり,大動脈瘤破裂の場合は出血により血圧低下となることから考えにくい.また,〈p〉急性下肢動脈閉塞は適切な治療を行わなければ下肢切断のみならず,生命予後も不良となるため,正確な鑑別が必要である〈p〉身体所見として,疼痛のほかに,知覚鈍麻,蒼白,脈拍消失,運動麻痺などの所見がないか診察する

 これらの緊急疾患が除外された場合,引き続き詳細に医療面接と身体診察を進め

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