診療支援
診断

構音障害,四肢筋萎縮
70歳代 男性
松井 龍吉
(益田赤十字病院 副院長)

現病歴:受診1年3か月くらい前から構音障害がみられ,近医を受診し頭部MRI検査を受けるが明らかな異常は指摘されなかった.しかし,その後も緩徐に構音障害が進行し,手足に力が入りにくく,やせてきたため当院を紹介受診となる.

既往歴:糖尿病,心房細動.

生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴なし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長162cm,体重56kg,血圧104/72mmHg,脈拍81回/分(整),SpO2 96%(room air).頸部リンパ節腫大なし.胸腹部異常所見なし.眼球運動制限なし.挺舌可能,偏位なし.舌萎縮なし.舌に線維束性攣縮あり.開鼻声.催吐反射(gag reflex)陽性.握力は右23kg,左22kg.両側骨間筋,母指球の萎縮性変化あり.上腕,前腕,骨間筋などに線維束性攣縮あり.上腕二頭筋反射,上腕三頭筋反射,膝蓋腱反射は右優位に亢進あり.下肢末梢に触覚鈍麻あり.下肢振動覚低下あり.明らかな失調症状なし.独歩可能.

【問題点の描出】

糖尿病にて加療中,緩徐に進行する嚥下障害を認め受診.診察にて四肢末梢優位の筋萎縮(図1)および筋力低下,線維束性攣縮,四肢腱反射亢進を認める.

診断の進め方

(筋萎縮を生じる疾患として)

特に見逃してはいけない疾患・頻度の高い疾患

・神経原性筋萎縮

  筋萎縮性側索硬化症(ALS)

  Charcot-Marie-Tooth(シャルコー・マリー・ツース)病

・脊髄性筋萎縮症(SMA)

  Kugelberg-Welander(クーゲルベルク・ウェランダー)病など

  球脊髄性筋萎縮症

・筋原性筋萎縮

・筋進行性ジストロフィー

  多発性筋炎

  筋緊張性ジストロフィー

・代謝性ニューロパチーに伴う筋萎縮

  糖尿病性ニューロパチー

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 筋萎縮が生じてきている患者に対して,まず筋萎縮がどこから始まっ

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