診療支援
治療

36メタノール
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・有機リン系農薬である日農ディプテレックス乳剤®は,有機リンのDEPの他にメタノールを34%含有している.その他,溶剤,洗浄剤などに含有されている.


診断のポイント

・メタノールへの曝露歴および曝露が生じる状況がある患者に,アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシス,視覚異常を認める.

・血清メタノール濃度の高値または浸透圧ギャップの開大を認める.ただし,メタノールがほとんど代謝された後では,血清濃度が測定限界以下,または,浸透圧ギャップが正常値であることがある.

・浸透圧ギャップから血清メタノール濃度を推定することができる(A 原因薬毒物の推定:2)osmolal gap(浸透圧ギャップ):GAME(ゲーム)参照).

  血清メタノール濃度=浸透圧ギャップ×3.2(変換係数)


治療のポイント

・代謝性アシドーシスがあれば,炭酸水素ナトリウムで補正して蟻酸の尿中排泄を促す.

・血清メタノール濃度≧20mg/dL,または,浸透圧ギャップ≧5mOsm/kgであれば,エタノールを経口投与または静注して,血中エタノール濃度を100~150mg/dLに維持.

・血清メタノール濃度≧40mg/dL,または,浸透圧ギャップ≧10mOsm/kg,著しい代謝性アシドーシス,視覚異常,腎不全があれば血液透析法を施行.

・葉酸1mg/kg,最大50mgを4~6時間ごとに24時間静注.


Do&Don't

・活性炭に吸着されないので,活性炭を投与しない.


体重50kgの実践投与量

エタノールの投与:血中エタノール濃度100~150mg/dLに維持する.経口投与では,50%液で75mLを初期投与し,10~20mL/時で維持.ただし,血液透析中は20~35mL/時に増量.静注では,5または10%液で37.5gを初期投与し,5~10g/時で維持.ただし,血液透析中は10~17.5g/時に増量.

葉酸の

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