診療支援
治療

【5】ショック
shock
西信 俊宏
(獨協医科大学・総合診療医学)
志水 太郎
(獨協医科大学主任教授・総合診療医学)

症候を診るポイント

●早期に認識し人数を集めることで早期の病態の安定化をはかる.

●問診,身体診察,初期治療を同時に進める.

●ショックの分類を行い原因検索と根治治療を行う.

▼定義

 組織の低灌流・酸素需要増大・酸素利用障害のために起こる組織低酸素血症を表す症候群

▼病態生理

 ショックの病態生理を考えるうえで重要なことは組織低酸素における負の循環形成と循環動態に影響する因子を知ることである.さまざまな原因により起こった組織低灌流のために細胞での酸素の需要と供給のバランスが崩れ細胞機能障害が起こる.細胞障害はさらに炎症物質の産生・放出を誘導し,微小血管障害を引き起こし,組織低灌流をさらに増悪させる.この負の循環形成を止めなければ,最終的に多臓器不全(multiple organ failure:MOF)を起こし死に至る.これより,ショックの臨床症状は低灌流を代償するための自律神経症状と細胞障害のために引き起こされた臓器障害の症状であるといえる.

 ショックは病態に応じて血液分布異常性ショック,循環血液量減少性ショック,心原性ショック,閉塞性ショックの4つの病態に分類され,それぞれに原因となる代表疾患がある(表1-32).ただし各病態が複合的に発症することや経過により異なる病態を呈することがあるため注意をする必要がある.この4つの分類を考えるときに循環動態に影響する因子を知っておく必要がある.循環動態は心拍出量と全末梢血管抵抗に起因し,心拍出量は1回心拍出量と心拍数に起因する.また1回心拍出量は前負荷,後負荷,心収縮力に起因する.これらの構成要素が障害を受けることでショックとなる.一般的に血液分布異常性ショックは敗血症と非敗血症性(アナフィラキシー,高位脊髄損傷など)により全末梢血管抵抗と後負荷が障害されて起こるショックで,血管抵抗の低下により血管容積が増大し相対的な循環血液量の不足を

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