診療支援
治療

【5】体重減少
weight loss
北川 泉
(湘南鎌倉総合病院・総合内科・総合診療科部長)

症候を診るポイント

●ストレス,運動,食生活の変化でも体重減少をきたすが,6か月以内に5%以上の体重減少があれば,その原因を同定する.

▼定義

 6か月以内に5%以上の体重減少があるものをいう.健康な人が体重減少をきたした場合は,なんらかの全身疾患が隠れていることがある.意図しない体重減少は,成人では1.3~8%であるが,高齢者においては27%でみられるとされている.10%以上の体重減少は蛋白質・エネルギー低栄養があることが予測され,細胞性および液性免疫機能の低下を伴う.20%以上の体重減少は重度の低栄養状態で臓器障害をきたす.

▼病態生理

 視床下部に存在する摂食中枢と満腹中枢の制御により,摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが保たれている.また代謝動態エネルギーも関与し,このバランスがマイナスバランスになると体重は減少する.

▼鑑別診断

 体重減少の原因としては,摂取エネルギーの減少,摂取エネルギーの利用障害,代謝亢進によるエネルギー消費の増大があり,疾患の鑑別には多岐にわたる.診断へのアプローチは,まずは意図的なものかそうでないかに分ける.意図的であればダイエット,神経性やせ症,過食症が挙げられる.次に食欲の有無で分け,食欲ありであれば歯科・口腔内の疾患,嚥下障害,甲状腺機能亢進症,糖尿病,吸収不良症候群が挙げられる.食欲なしの場合は,悪性腫瘍,うつ病や認知症,消化管疾患(潰瘍,慢性膵炎,炎症性腸疾患),感染症,慢性心肺疾患,腎機能不全,神経疾患,結合組織疾患,薬剤(アルコール含む)が挙げられる.悪性腫瘍では特に上部消化管癌や膵癌を除外する.内分泌疾患では,糖尿病,甲状腺機能,副腎疾患(副腎不全)が挙げられる.

 若年者の体重減少では,糖尿病,甲状腺機能亢進症,摂食障害,感染症を考える.

 高齢者での体重減少の16~36%は悪性腫瘍で最も多く,次にうつ病などの精神疾患,消化器疾患と

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