診療支援
治療

【4】慢性閉塞性肺疾患
chronic obstructive pulmonary disease(COPD)
一ノ瀬 正和
(大崎市民病院・アカデミックセンター監理官)

疾患を疑うポイント

●中高年の喫煙経験者.

●症状として慢性の咳・痰,労作時呼吸困難が挙げられるが,これら症状に乏しい場合もあり注意を要する.

学びのポイント

●COPDの病因には,タバコ煙に代表される有害粒子による肺の炎症が第一に挙げられるが肺の低発育もその一因と考えられる.

●COPDの大多数は喫煙歴があるが,非喫煙者でも発症することがある.

●薬物治療の中心は気管支拡張薬で,喘息合併症例には吸入ステロイドを併用する.

▼定義

 COPDは「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり,呼吸機能検査で気流閉塞を示す.気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる.臨床的には徐々に進行する労作時の呼吸困難や慢性の咳・痰を示すが,これらの症状に乏しいこともある」と定義される.

▼病態

病因

 タバコ煙やバイオマス燃料の煙などのほかの有害粒子吸入は通常,肺に軽度の炎症を誘発するが,COPDを発症する患者では炎症反応が慢性的に増強され,肺末梢気道の狭小化,肺胞壁の破壊,過分泌に至ると考えられる(図2-16).COPD患者で炎症反応の増強が起こる理由として,プロテアーゼ/アンチプロテアーゼ不均衡や酸化ストレス制御機能の低下などが提唱されている.

 COPDの遺伝的危険因子で最も知られているのはα1アンチトリプシン欠損症で,好中球エラスターゼに対する拮抗作用の低下から気腫化を起こすと考えられるがわが国ではきわめてまれである.マトリックスメタロプロテアーゼ過剰産生や抗酸化酵素産生低下に関連する遺伝子とCOPD発症の関連性も報告されている.COPD患者でテロメアの短縮や肺組織での老化マーカーの上昇があることから,老化の加速がCOPD発症に関与するとの仮説もある.最近では,COPD発症危険因子として,小児喘息罹患などによる肺の低発育,小児期の呼吸器

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