▼定義
脚以下の刺激伝導系,Purkinje(プルキンエ)線維,作業心室筋を起源とする調律が連続して出現するものをいう(図3-30図).通常,QRS幅が0.12秒以上のwide QRS波形を呈し,心拍数は100~250/分とさまざまである.定義上は,PVCの3連発以上をVTとするが,臨床的には,6連発以上あるいは10連発以上をVTと考えることが多い.
▼病態
VTの発生機序としては,リエントリー,異常自動能,撃発活動があるが,器質的心疾患に伴うVTをはじめ多くのVTの機序はリエントリーである.リエントリーの成立には,一方向性ブロックと伝導遅延の条件が必要であり,器質的心疾患による心室筋の瘢痕化した部位に挟まれた峡部が伝導遅延部位となることが多い.一部の急性心筋虚血時に出現するVTは,異常自動能亢進が機序と考えられている.撃発活動は,心室筋活動電位第2~3相から出現する早期後脱分極(early afterdepolarization:EAD),または第4相から出現する遅延後脱分極(delayed afterdepolarization:DAD)のいずれかから出現する.QT延長に伴って出現するTorsade de Pointes(TdP)や特発性VTの一部は撃発活動を機序とすると考えられている.器質的心疾患としては,虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞),心筋症(拡張型心筋症,肥大型心筋症,不整脈原性右室心筋症),心臓弁膜症(大動脈弁疾患),心サルコイドーシス,左室緻密化障害などがある.
器質的心疾患の種類,心機能,頻拍の持続や心拍数などによって異なるが,VT中には心室充満時間の短縮,心室壁運動異常などにより心室ポンプ機能が低下する.このため,VT中には,動悸,胸部圧迫感などの自覚症状のほかに,心拍数が速い場合には,めまい,失神,けいれんなどの脳虚血症状を呈することもある.一方で心拍数
関連リンク
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- 臨床検査データブック 2023-2024/期外収縮(二段脈,三段脈,ショートラン)
- 臨床検査データブック 2023-2024/心房細動(AFあるいはAf)
- 臨床検査データブック 2023-2024/WPW症候群,早期興奮症候群
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