▼定義
QT時間の延長とTorsades de Pointes(TdP)を認める疾患である(図3-34図).QT延長は,修正QT時間(QTc=QT/$\sqrt{RR}$)が440ミリ秒以上と定義される.
▼分類
➊先天性LQTS
多くの場合家族性を認め,安静時からQT時間が延長している場合が多い.臨床的に,常染色体顕性(優性)遺伝形式をとるRomano-Ward(ロマノ-ワード)症候群と,常染色体潜性(劣性)遺伝形式をとり両側性感音性難聴を伴うJervell-Lange-Nielsen(ジャーベル-ランゲ・ニールセン)症候群に分類される.
➋後天性(二次性)LQTS
薬剤,電解質異常,徐脈などの誘因が加わった場合にQT時間が著明に延長してTdPを発症し,原因,誘因を除去すればQT時間が正常範囲か境界域まで改善する.しかし,後天性LQTS患者の一部の患者においても,先天性LQTSで報告のある原因遺伝子に変異が報告されている.先天性LQTSと後天性LQTSの分類は臨床診断に基づくものであり,遺伝子診断がゴールデンスタンダードとなった現在では,見直されるべきかもしれない.
このため本項では,以下,先天性LQTSについて概説する.
▼病態
先天性LQTSは,主に心筋の活動電位を形成するイオンチャネルとこれに関連する細胞膜蛋白などをコードする遺伝子上の変異により発症する.遺伝子変異によりイオンチャネル機能障害をきたし,QT延長からTdPを発症し,時にVFに移行し突然死の原因となる.K,Na,Ca電流などのイオンチャネルに関連する遺伝子上に変異を認め,心室筋活動電位プラトー相の外向きK電流が減少,または内向きNa,Ca電流が増加して心室筋活動電位持続時間(action potential duration:APD)が延長しQT時間が延長する.TdPの機序は,早期後脱分極(early afte