診療支援
治療

【2】慢性心不全
chronic heart failure
筒井 裕之
(九州大学大学院教授・循環器内科学)

疾患を疑うポイント

●人口の高齢化・生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患の増加により心不全患者は増加の一途をたどっている.

●慢性心不全の主たる症状は,呼吸困難,浮腫などの臓器うっ血による症状と易疲労感などの低心拍出量による症状.

学びのポイント

●心不全に陥ると,自覚症状や運動耐容能の低下のためQOLは低下し,増悪による再入院を繰り返し生命予後はきわめて不良.

●さらに致死的不整脈による突然死の頻度も高い.

●心不全の原因疾患は多岐にわたるが,日本におけるデータで原因疾患として多いものは①虚血性心疾患,②高血圧,③弁膜症,④心筋症の順であった.

▼定義

 なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群.

▼病態

 心不全の病態形成には,心筋収縮不全および拡張不全,神経体液性因子の活性化および心筋リモデリングが重要な役割を果たしている.心筋に障害が加わると,心筋収縮機能低下に対する代償機転として交感神経系やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(renin-angiotensin-aldosterone:RAA)系などの神経体液性因子の活性化が引き起こされる.さらにTNF-αなどのサイトカインや活性酸素の過剰状態である酸化ストレスなども活性化される.神経体液性因子の過剰な活性化は,心筋リモデリングを引き起こし,さらに心筋障害や心ポンプ機能低下を助長させ,悪循環サイクルを形成する.このような悪循環サイクルが,心不全の病態の形成・進展において中心的役割を担っている.

▼疫学

 2018年度の日本における心不全による入院患者数は約28万人で(循環器専門施設・研修関連施設),年に2万人以上の増加数である.急性心不全と慢性心不全が約50%ずつであった.心不全患者総数

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