診療支援
治療

【1】本態性高血圧
essential hypertension
大石 充
(鹿児島大学大学院教授・心臓血管・高血圧内科学)

疾患を疑うポイント

●近年若年発症が増えてきているが,壮年期以降の発症が多く,加齢とともに増加する.

●症状がないことが多く,健診などで指摘される.

学びのポイント

●高血圧は最も頻度が高い生活習慣病,かつ心血管死亡に最も強く寄与する疾患であり,循環器病予防の観点から厳格な降圧が重要である.

●数多くの降圧薬が使用可能であるにもかかわらず,降圧目標達成率が45%程度ときわめて低く,この現象がhypertension paradoxとよばれている.

●血圧上昇の原因はさまざまであるが,日本人は食塩感受性高血圧(食塩摂取により血圧が上昇する)の頻度が高いとされる.

●近年は欧米を中心に“the lower,the better”の考え方が広がり,厳格な降圧が求められる.

▼定義

 安静坐位で血圧を測定し2回の平均が収縮期血圧140mmHgかつ・または拡張期90mmHg以上で,ほかの二次性高血圧を除外したものと定義される.家庭血圧(135/85mmHg以上)と診察室血圧が解離する場合,家庭血圧が優先される.

▼病態

 本態性高血圧はさまざまな機序で血圧が上昇した病態といえる(図3-107).生理学的・血行動態的には循環血液量と末梢血管抵抗の積で血圧は規定される.循環血液量は食塩摂取と排泄のバランス(食塩感受性)によって多くが規定され,末梢血管抵抗はCaチャネルを介した血管収縮によって規定される.食塩感受性(高齢・慢性腎臓病・肥満・閉経後女性・糖尿病)の人が食塩を過剰摂取すると,Naを体外に排泄するために血圧を上昇させる(圧-利尿曲線).昼間だけでは十分に塩分排泄が行われないために夜間にまで血圧を上昇させる夜間高血圧を呈し,夜間頻尿になることもある.一方で末梢血管抵抗増加による血圧上昇は血管緊張によるものであるが,血管リモデリング(平滑筋増殖による末梢血管壁肥厚)による過度の血管抵抗増加が血圧上昇に大

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