診療支援
治療

(3)肝肺症候群
hepatopulmonary syndrome(HPS)
髙村 昌昭
(新潟大学大学院准教授・消化器内科学)
寺井 崇二
(新潟大学大学院教授・消化器内科学)

疾患を疑うポイント

●明らかな心肺疾患のない慢性肝疾患症例で,くも状血管腫やばち状指,チアノーゼがみられた場合はHPS合併を疑う.

学びのポイント

●HPSは肺内血管の拡張が主因となり低酸素血症をきたす病態である.

●HPSの自他覚所見として,呼吸困難,くも状血管腫,ばち状指,チアノーゼなどがあり,心肺疾患のない慢性肝疾患症例でみられた場合,HPSを念頭におき精査を進める.

●HPSは進行性で予後は不良であり,現時点で有効な治療法は肝移植である.

▼定義

 HPSは進行した肝疾患や門脈圧亢進症,先天性門脈-大循環シャントなどで出現する肺内血管の拡張が主因となって低酸素血症を呈する病態である.

▼病態

 HPSは,換気血流比不均等拡散障害肺内シャントの増大が病態の中心と考えられている(図5-12)

換気血流比不均等

 肺内血管拡張による肺血流量の増加や門脈圧亢進症での全身循環亢進状態が換気血流比の低下をきたし酸素化の障害が生じるとされる.

拡散障害

 肺内血管拡張による拡散距離の拡大と門脈圧亢進症での心拍出量増加による血流速度の増加でヘモグロビンが換気と接する時間が短縮されることが原因とされる.

肺内シャントの増大

 上記の機序で酸素化されない機能的シャントや肺胞を迂回する解剖学的シャントにより,混合静脈血が体循環に流入することで低酸素血症をきたす.

▼疫学

 HPSは肝硬変症例の15~30%にみられる合併症である.頻度は低いものの急性肝炎,慢性肝炎,特発性門脈圧亢進症といった肝疾患でも発症することが報告されている.

▼診断

 European Respiratory Society Task Force(2004)より,3項目からなる診断基準と4段階の低酸素血症の重症度が提唱されている(表5-10)

肝疾患の存在

 門脈圧亢進症症例で多いが,上述のように肝硬変の有無によらずさまざまな肝疾患で発症

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