診療支援
治療

(4)門脈血栓症
portal vein thrombosis
髙村 昌昭
(新潟大学大学院准教授・消化器内科学)
寺井 崇二
(新潟大学大学院教授・消化器内科学)

疾患を疑うポイント

●肝硬変で頻度が高く,肝硬変の経過観察中に食道胃静脈瘤や腹水の急激な増悪などがみられた場合に画像検索を行い門脈血栓の有無を確認.

学びのポイント

●門脈血栓症の原因として肝硬変が最も多い.

●無症状で画像検査により偶然発見されるものから,腹痛などの症状をきたし緊急治療を要するものまで多彩である.

●門脈血栓を認めたら,血栓の出現範囲や腸管虚血の有無などの評価のために造影CT検査を行う.

●アンチトロンビンⅢ低下を伴う症例では乾燥濃縮人アンチトロンビンⅢの投与を行う.

 本疾患は,腫瘍,感染症,外傷といった肝疾患以外の原因でも起こりうるが,肝疾患が原因で発症するものを概説する.

▼定義

 さまざまな原因により門脈内に血栓を形成する疾患である.

▼病態

 血液の凝固・抗凝固のバランス消失,門脈圧亢進,門脈の血流異常,門脈の血管内皮の変化や周囲からの炎症波及など原因疾患によりその主因は異なる.

▼疫学

 原因疾患として肝硬変が約75%と最多である.非肝硬変の原因としては,特発性門脈圧亢進症が約18%と最多である.肝硬変では,代償性(16%)よりも非代償性(35%)でその頻度が高くなると報告されている.続発性のものとしては,脾摘や肝切除などの手術後や肝癌(経皮的ラジオ波焼灼術,肝動脈化学塞栓術),静脈瘤(内視鏡的静脈瘤硬化療法,バルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術),門脈圧亢進症(部分的脾動脈塞栓術)に対する治療後に発症することがある.

▼診断

 慢性の経過で形成された場合は無症状に経過することが多く,食道静脈瘤の形成・破裂,脾腫,肝機能障害を契機に,あるいは肝細胞癌のスクリーニング検査時や肝移植待機中に偶然画像検査で診断されることがある.一方急性の経過で形成された場合は,腹痛,下血,発熱といった症状をきたすことが多く,門脈本幹が閉塞した場合には肝不全,播種性血管内凝固症候群,ショック,さら

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