診療支援
治療

3 2型糖尿病
type 2 diabetes mellitus
植木 浩二郎
(国立国際医療研究センター研究所・糖尿病研究センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●初期には自覚症状に乏しいが,食後血糖やHbA1c値の高値から疾患の存在を疑う.

●数か月間の急激な体重減少,口渇・多飲・多尿などの糖代謝失調の典型的症状を見逃さない.

●家族歴や肥満歴,自己抗体の有無などが糖尿病の分類を考えるうえで重要.

学びのポイント

●2型糖尿病は,個々の患者において,膵β細胞の機能や量の低下によるインスリン分泌不全と,肥満などによるインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなっている状態)の両方が病態として種々の程度で混在している.

●個々の患者におけるCペプチド値などのインスリン分泌能の検討と,肥満度や骨格筋量などインスリン抵抗性に関与する因子の評価を行うことが重要.そのうえで,患者の生活環境や嗜好も考慮したうえで食事や運動,薬物療法などの選択を行う.

●薬物療法の選択においては,腎症などの合併症の進行度やADLないしは認知機能なども考慮する必要がある.

▼定義

‍ 2型糖尿病は,多くの場合,膵β細胞の機能や量の低下などに関連する遺伝的背景をもとに肥満や,過食,骨格筋量,加齢などの環境要因が加わり,インスリン分泌の低下とインスリン抵抗性によって,インスリンの作用不足のために慢性の高血糖状態を呈する疾患(図6-8).実際の診断にあたっては,1型糖尿病やその他特定の機序,疾患によるものを除外することで確定する.

▼病態

 肥満や過食・運動不足などがある場合,インスリンの必要量が増大するため,膵β細胞の機能亢進や量の増加などによるインスリンの分泌増加によって,血糖の恒常性を保とうとする.一方,多くの糖尿病患者では,遺伝的に膵β細胞の機能や量に関する脆弱性があるため,必要量に見合うインスリンを分泌することができず,高血糖を生じるようになる(図6-9).特にブドウ糖に対する早期のインスリン分泌(インスリン初期分泌)が前糖尿病状態ですでに障害されていることが

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?