▼定義
糖尿病性神経障害とは,糖尿病に特有の代謝障害と細小血管障害が関与して生じる末梢神経障害である.
▼病態
組織学的所見として,ニューロンの障害を反映した「軸索変性」とSchwann(シュワン)細胞の障害を反映した「脱髄」の両者が混在することから,その病態は多因子が複雑に絡み合って構成されている.
発症機序としては,高血糖に起因したポリオール代謝の亢進,プロテインキナーゼC活性の異常,非酵素的糖化反応の亢進,酸化ストレスの亢進といった代謝異常が想定されており,その結果として神経系細胞(ニューロン,Schwann細胞)の機能異常が引き起こされる.また,同様の代謝異常が神経栄養血管の細胞(血管内皮細胞,平滑筋細胞)においても生じており,神経系細胞と血管系細胞のおのおのの障害が交錯しつつ神経組織の変性が進み,糖尿病性神経障害の病態が形成される.
臨床症状は,緩徐に進行する小径~大径神経線維の混合型変性に基づく感覚・運動神経障害を反映する.感覚神経障害としては,四肢遠位側より進行する小径線維の脱落による痛覚・触覚・温覚の低下・脱失および大径線維の脱落による振動覚・位置覚の低下・脱失が認められる.これらの陰性症状に混在して,しびれ,異常知覚,知覚過敏,自発痛などの陽性症状を呈することもある.陽性症状の表現として,「しびれる」「ジンジンする」「ビリビリする」「チリチリする」「足の裏に何かが貼りついている感じがする」「一皮かぶった感じがする」「砂利を踏んでいる感じがする」「蟻が這っている感じがする」などが代表的である.運動神経障害としては,明らかな筋力低下や筋肉量減少が自覚されることはまれであるものの,他覚所見として短趾伸筋の萎縮が認められることがある.
▼疫学
糖尿病性神経障害は,糖尿病性合併症のなかで最も頻度が高く,一般的には糖尿病患者の30~40%が合併しているといわれている.
▼分
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