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治療

1 温式抗体による自己免疫性溶血性貧血
亀崎 豊実
(自治医科大学地域医療学センター・地域医療支援部門教授)

▼臨床所見

 貧血,黄疸,脾腫を三徴とする.続発性では基礎疾患による症状もみる.Evans症候群では出血症状が前面に出ることがある.

▼検査所見

 塗抹標本では,小球状赤血球(microspherocyte)と多染性の大型赤血球(幼若な網赤血球)が混在し,時に赤血球凝集像を認める.網赤血球は著増するが,急性発症の初期では明らかでないこともある.骨髄は強い正赤芽球過形成を示す.

 血液生化学所見は,間接優位のビリルビン上昇,LDH(Ⅰ,Ⅱ型)上昇,ハプトグロビン低下を示す.血管内溶血を伴えば,ヘモグロビン血症やヘモグロビン尿をみる.

‍ 直接抗グロブリン〔Coombs(クームス)〕試験(direct anti-globulin test:DAT)ではIgGが陽性となり,過半数では間接法も陽性を示す.まれに直接Coombs試験が陰性の場合がある(Coombs陰性AIHA).

▼診断・鑑別診断

 溶血を示唆する症状と検査所見から溶血性貧血を確定し,直接Coombs試験でIgG陽性であれば,温式AIHAの可能性が高い.

▼経過・予後・合併症

 小児・若年者では急性型が多い.その他の多くは慢性型で,しばしば悪化・再燃を反復する.発症から数年後に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)や悪性リンパ腫が明らかになることもある.

 特発性AIHAでの直接Coombs陰性化率は5年までに50%,生存率は80%であるが,高齢者では相対的に予後不良である.続発性AIHAの予後は基礎疾患に依存し,5年生存率は50%である.

 合併症の多くは副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬の副作用と関連する.

▼治療

 特発性AIHAには副腎皮質ステロイドが第一選択であり,90%以上の有効率がある.初期治療にはプレドニゾロン換算1mg/kg/日を投与,通常,3~4週間後に溶血は鎮静化し,その後

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