診療支援
治療

4 ウイルス性髄膜炎
viral meningitis
犬塚 貴
(岐阜市民病院・認知症疾患医療センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●急性に発熱,頭痛,悪心・嘔吐で発症し,髄膜刺激症候がみられる場合,髄膜炎を疑う.

●髄液検査で単核球優位の細胞数軽度増加,蛋白の軽度増加,糖の正常が認められれば無菌性髄膜炎,なかでも多数を占めるウイルス性髄膜炎を疑う.

学びのポイント

●発熱,頭痛,悪心・嘔吐による急性発症が特徴.

●髄膜刺激症候の診かたを確認する.

●発症初期における病原ウイルスの同定は容易ではなく,無菌性髄膜炎としてウイルス性以外の原因を含めて広く考える.

●脳実質への炎症の広がりが示唆された場合は,脳炎として対処する.

●細菌性の可能性が残る場合は治療機会を逃さず,抗菌薬による経験的治療を併用する.

▼定義

 ウイルス性髄膜炎は脳・脊髄の表面を覆う軟膜・くも膜,その両者に囲まれたくも膜下腔に生じたウイルス感染に基づく炎症である.病変が髄膜に限局しているものをいうが,実際には髄膜に接する脳実質に影響を及ぼしている場合もある.強い炎症が両者にあれば髄膜脳炎とよび,脳炎としての対処が必要となる.

▼病態

 ウイルス性髄膜炎を生じるウイルスは神経系以外に感染後,血行性に髄膜に広がるのが一般的であるが,ヘルペスウイルスのように神経内に潜伏感染していたものが,再活性化され神経線維に沿って広がることもある.ウイルス性髄膜炎では発熱,頭痛,悪心・嘔吐で急性に発症し,しばしば髄膜刺激症候である項部硬直,羞明やKernig(ケルニッヒ)徴候などを伴う.ただし,これらの症候はウイルス性に特異的ではなく,ほかの原因による髄膜炎でもみられる.倦怠感,疲労感,傾眠,筋肉痛など非特異的症状,あるいは腹痛,下痢,皮疹など当該ウイルスに特有の症状を伴うことがある.意識障害,精神症状,行動異常,けいれん,局所神経徴候などは病変が脳実質にもあることを示唆しており,脳炎としての対処が必要である.

▼疫学

 ウイルス性髄膜炎と確定されたなかで,原因

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