疾患を疑うポイント
●発症年齢は10~50歳の間で女性に多い.
●脳や脊髄に複数の無症候性MRI病変を認める.
●中枢神経症状の再発と寛解を繰り返す.
学びのポイント
●発症にT細胞を中心とした免疫担当細胞が関与している.
●日本を含む東アジアでは人口10万人あたりの有病率は5~20人で,欧米に比べると非常に低い.
●病初期から脳萎縮の進行が認められることがあり,40歳代半ばから歩行障害や認知機能障害が慢性的に進行することがある.
●再発予防や進行予防に用いる疾患修飾薬は効果と安全性に大きな違いがあり,患者背景や価値観にあった治療薬を選択する.
▼定義
誘因なく発作性に中枢神経症状(視力低下,複視,脱力,感覚障害,失調など)を繰り返す疾患であり,その背景には中枢神経における炎症性脱髄がある.
▼病態
T細胞を中心とする自己免疫が重要な役割を果たしている.特にTh1細胞が産生する炎症性サイトカイン(インターフェロンγ)が重要である.中枢神経内の炎症により髄鞘が破壊され,脱髄を主体とした病変が神経活動を妨げることでさまざまな症状を呈する.病変には髄鞘を貪食した活性化マクロファージが多数認められ,血管周囲にリンパ球浸潤を伴う.
感受性遺伝子としてHLA-DRB1*1501があり,ほかにも免疫関連分子の遺伝子多型が多くかかわっており,遺伝的要因が発症に影響すると考えられる.
進行期に脳萎縮がみられることがあり,神経変性が初期から病態にかかわっていると考えられているが,その機序は不明である.病理学的に,髄膜にリンパ濾胞様構造が認められる症例では大脳皮質内病変が比較的多く,脳萎縮や慢性進行との関連が示唆されている.発症早期から脳萎縮を認める症例は予後が比較的悪く,高次脳機能障害が顕著になることもある.
▼疫学
わが国の有病率は10万人あたり8~20人であり,高緯度地域での有病率が高い.男女比は約1:3で女
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