診療支援
治療

【1】多発性硬化症
multiple sclerosis(MS)
中島 一郎
(東北医科薬科大学教授・老年神経内科学)

疾患を疑うポイント

●発症年齢は10~50歳の間で女性に多い.

●脳や脊髄に複数の無症候性MRI病変を認める.

●中枢神経症状の再発と寛解を繰り返す.

学びのポイント

●発症にT細胞を中心とした免疫担当細胞が関与している.

●日本を含む東アジアでは人口10万人あたりの有病率は5~20人で,欧米に比べると非常に低い.

●病初期から脳萎縮の進行が認められることがあり,40歳代半ばから歩行障害や認知機能障害が慢性的に進行することがある.

●再発予防や進行予防に用いる疾患修飾薬は効果と安全性に大きな違いがあり,患者背景や価値観にあった治療薬を選択する.

▼定義

 誘因なく発作性に中枢神経症状(視力低下,複視,脱力,感覚障害,失調など)を繰り返す疾患であり,その背景には中枢神経における炎症性脱髄がある.

▼病態

‍ T細胞を中心とする自己免疫が重要な役割を果たしている.特にTh1細胞が産生する炎症性サイトカイン(インターフ

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