▼定義
グラム染色でブドウの房状の形態を示す,グラム陽性球菌である(図11-12図).皮膚軟部組織感染や骨髄炎,心内膜炎の原因となる.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)は,臨床上最も重要な耐性菌の1つである.MRSAは医療スタッフの手指を介する院内伝播を起こす.β-ラクタム系抗菌薬が細胞壁(ペプチドグリカン)合成酵素であるペニシリン結合蛋白(penicillin binding protein:PBP)に結合し細胞壁合成阻害を引き起こすが,MRSAはβ-ラクタム系抗菌薬に対する親和性の低いPBP2'を有し耐性化する.
PBP2'産生に関与する遺伝子はmecAとよばれ,この遺伝子は外来性の可動性遺伝因子(mobile genetic element)であるstaphylococcal cassette chromosome mec(SCC mec)によってブドウ球菌種間で伝達される.
▼病態
多くの皮膚軟部組織感染は黄色ブドウ球菌が原因となるが,A群連鎖球菌による場合も多い.単純性皮膚軟部組織感染症は,毛包が関与する付属器感染とそれ以外の非付属器感染に分類される.付属器関連感染は表在性(表層真皮)の毛包炎(個々の毛囊に限局,周囲の炎症は軽度)など,深在性(深部真皮)の癤(単一の毛包を中心とした周囲の急性炎症),癰(隣接する複数の毛包を巻き込んだ,より深部に発生する急性炎症)など,非付属器関連感染は,表在性(表皮)の伝染性膿痂疹,深在性(皮下組織)の蜂巣炎,丹毒(B群連鎖球菌が原因),リンパ管炎,リンパ節炎などを含む.複雑性皮膚軟部組織感染症は感染性粉瘤や外傷,熱傷,手術創などの皮膚二次感染が含まれる.切開部における手術部位感染ではMRSAは主要原因菌種である.
血流感染ではコアグラーゼ
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