診療支援
治療

2 鳥インフルエンザ
avian influenza
池松 秀之
(リチェルカクリニカ・代表取締役)

学びのポイント

●鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染して起こる病態でまれ.

●鳥との濃厚接触が主な感染源.

●ヒトからヒトへ感染するウイルスに変異することが懸念されている.

▼定義

 鳥インフルエンザウイルスに感染して起こる病態.一般的に鳥インフルエンザウイルスはヒトに感染が起こることはまれである.病鳥あるいは死亡した鳥との濃厚接触が主な感染経路で,鳥との接触の機会が多い若年者や,生きた家禽(生鮮)市場で感染した鳥へ直接曝露した人に発生すると考えられている.

 鳥インフルエンザウイルスは家禽に対して致死性を示さない低病原性鳥インフルエンザウイルス(LPAIウイルス)と高い致死性を示す高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIウイルス)に分類されている.

 鳥にはA型インフルエンザウイルスの多くの亜型の感染がみられるが,ヒトへの感染は,H5,H7,H9を有するいくつかの亜型が報告されている.H5N1とH7N9の報告数が多い.ごく少数ではあるが,H10N8,H10N7,H6N8も報告されている.

▼疫学

 1997年香港にてH5N1のヒトへの感染で18人中6人の死亡が報告された.その後,アジアのみならず中東などでの発生が報告され,WHOの集計では死亡率は高率とされている.ほかの亜型のヒトへの感染が,アジア(H9N2),カナダ(H7N3),オランダ(H7N7),中国(H10N8,H7N9,H7N4)で報告されている.オランダにおけるH7N7のアウトブレイクでは,結膜炎が最も多い症状であったが,インフルエンザ様症状もみられ,83人中1人の患者が死亡している.H10N8のヒトへの感染が2013年に,中国の南東部で2例報告され,免疫不全状態の高齢女性患者1名の死亡が報告されている.H7N9のアウトブレイクが2013年に中国南東部で発生した.その後も中国で冬季に流行し,2013年から2018年5月までに

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