学びのポイント
●3歳までにほぼ100%が初感染を受ける.
●3か月未満の乳幼児では無呼吸や重症の呼吸不全がみられることがある.
●再感染があり,高齢者での発症や肺炎合併がみられる.
▼定義
respiratory syncytial virus(RSV)の感染により発症する.RSウイルスはパラミクソウイルス科ニューモウイルス亜科ニューモウイルス属に分類されるRNAウイルスである.宿主細胞との接着に必要な表面の糖蛋白であるG蛋白,細胞内侵入に必要なF蛋白およびSH蛋白のエンベロープをもつ.G蛋白の抗原性の違いによる血清型により大きくA型とB型の2つに分類され,さらに遺伝子亜型に分類される.
▼疫学
RSV感染症は世界中に存在し,地理的あるいは気候的な偏りはない.温帯地域では冬季に,熱帯地域では雨期に,南米や南アフリカでは乾季に流行をみることが多い.日本では11~1月にかけての流行が報告されていたが,近年日本では小児で9月ごろに流行のピークがみられている.A型とB型で,優位な流行株を2~3年で交代させているが,これらの比率は流行年度や地域によりさまざまである.
ほかの多くのウイルス感染症と異なり,母体からの移行抗体が豊富に存在する乳児期早期にも感染が成立する.生後 1 歳までに半数以上が,2~3歳までにほぼ100%が初感染を受けると考えられている.2歳以下の下気道感染の原因として最も頻度が高いと推定されている.乳幼児の肺炎の約50%,細気管支炎の約50~90%がRSウイルスの感染によるとされる.感染者の30~40%が下気道炎を発症し,さらに1~3%が重症化し入院治療を要する.終生免疫は獲得されず,成人や高齢者に上気道炎を発症することがある.高齢者の下気道感染症を起こし,肺炎球菌などによる細菌性肺炎を合併すると考えられる.
▼病態
接触あるいは飛沫により鼻粘膜に感染し,2~8日の潜伏期を経